たらればに手を振れ
写真を撮りに行けなかった日は過去の写真を投稿しようと思います。
これは写真を撮り始めて数ヶ月経ち、撮影したものです。
ブッポウソウ目カワセミ科のカワセミ。漢字では翡翠、英名はCommon Kingfisher。
その名の通り水中に飛び込み魚を捕らえます。捕らえる場面に何度か出くわしたこともありますが、ブレブレの写真しか撮れていませんでしたね。
北海道では夏鳥で、本州から沖縄にかけては留鳥として分布します。
長いくちばしと短い尾のスズメほどの大きさの鳥。尾を上下するしぐさがとてもかわいい。雄のくちばしは全体が黒いのに対し、雌の下くちばしは赤っぽい。この写真のカワセミは雌のようですね。
北海道全域で平地の河川や湖沼に生息し繁殖する。夏鳥ではあるが、一部不凍水域では越冬するものもいるようです。繁殖期以外は1羽で生活。縄張り性は強いらしい。止水、川では流れの緩やかな場所を好む。水辺の枝や岩にとまるか、ホバリングしながら魚を探し、見つけるとダイブ。捕らえた獲物を枝などに打ちつけ、弱らせて丸飲みする。崖、川岸の土壁、土山、山道など垂直な土壁に横穴を掘り営巣する。条件がよければ1シーズンに2回以上繁殖することもあるみたいです。
この写真を撮影した時のことはいまでもよく覚えています。あれは1年か2年前の春から夏の間の良く晴れた日。雨が降り出しそうな中、写真のカワセミがとまっている枝をみつけて、「ここにカワセミがとまったら絵になりそうだなあ」と遊歩道脇の草むらで待機。遊歩道をゆく人は草むらに潜む僕に気付くととても驚いた顔をしていました。僕は学生時代ストーカーとのぞきに間違えられたことがあります。そんな男がフードをかぶって草むらに潜んでいたらどうでしょう。
そんな視線に耐え待っているとその枝にカワセミがとまりました。そして撮った写真がこれです。ひどいものです。手前の草が邪魔しているし、構図もせっかくの止まり木があまり写っていなく、カワセミが見つめる水面も見えません。
カワセミを左上に配置して止まり木全体とカワセミの視線とカワセミのみつめる水面が写っていればいい写真になったのでしょうか。好機を掴むのはとても難しいものです。待ち続けて掴みかけた好機。しかし掴み損ねた。そんな写真だからよく覚えています。思えばたくさんの好機を掴み損ねてきたような気がします。好機であることにすら気づかなかったものもたくさんあるんだろうなあ。「あのときああすれば」なんて意味のないことをよく考えてしまいます。過去の奴隷だ。たらればにさらば。
思い返してみると僕はつまらない人間だったと思います。僕は自分が思う魅力的な人間でありませんでした。
僕が憧れた魅力的な人は、なにか大好きなことに夢中になっている人でした。映画でもアニメでもおもちゃでも何でもいいから本当に好きで好きでたまらないような人たちに魅力を感じていました。
僕は興味がないことばかりでした。アウトドアや動物は小さいころからずっと好きでしたが、誰かに誇れるほど好きなものがありませんでした。そもそも好きなものは誇るものではなく、あふれ出る欲望を抑えたくても抑えられないような、誰に何と言われようがやめられないようなものかもしれません。僕は誰かに認められたくて何かを好きになろうとしていたのか。
何かを始めようとしても何かと理由をつけて始められずにいました。お金がない。時間がないと、言い訳ばかりが上達していく。なにか好きなことを始めても自分より上の存在に劣等感を抱くのが怖かったのかも。本気でやって負けるのが嫌なんだな。
今も劣等感を抱いている。美しく素晴らしい瞬間を撮る人が大勢いる。機材や運やタイミングとかのせいにして言い訳したいけど、これはちょっとがんばってみようかとも思う。